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  <title>SS展示場</title>
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  <description>各本文上部に説明と注意書きあり</description>
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  <copyright>© Ninja Tools Inc.</copyright>
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    <item>
    <title>HELP ME（シンアス）</title>
    <description>
    <![CDATA[＊えろ注意 <br />
＊運命初期の頃のお話 <br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<strong>ＨＥＬＰ　ＭＥ</strong> <br />
<br />
<br />
<br />
<br />
群青というよりかは黒に近く、粘っこく地を這う巨大な闇。 <br />
<br />
時は２０時を過ぎた頃だろうか、既に温かみのある橙に変わり、月の有する無機的な蒼が辺りを照らし出している。 <br />
<br />
シンはひとつ短く息を吐くと、半壊したＭＳから飛び降りてその人へと駆け寄った。 <br />
<br />
「アスランさん！」 <br />
<br />
「シン、どうだった」 <br />
<br />
「駄目です。やっぱ、さっきまでの戦闘の影響でまだ電波もレーザーも通らないみたいで」 <br />
<br />
そうか、と深い海の色に良く似た髪のその人は俯いた。 <br />
<br />
切り崩したような小さな岩穴の中、シンはアスランの隣に焚いた火を囲んで座る。 <br />
<br />
<br />
<br />
ふたりは海の只中にいた。 <br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
ミネルバは同日、地球軍艦隊による執拗な攻撃を受け、シンもアスランも愛機にて出撃していたのだったが、 <br />
<br />
戦闘中、数にものを言わせた地球軍機に囲まれたインパルスを助けるべくアスランが多少無茶な突撃をし、その衝撃で頭部や背中を強打した際に視力を奪われた彼を庇うようにして、シンの機体もまた重い攻撃を受け、そのままふたりもつれるようにして海へと落ちたのだった。 <br />
<br />
両者の愛機は共に半壊しており、また動力部に大きな破損を負ったために、救助を待つ以外に行動の選択肢はないといった状態で、しかし救難信号を送ることもままならないまま現在に至る。 <br />
<br />
「目、まだ見えません？」 <br />
<br />
「ああ」 <br />
<br />
ぼんやりと応じる彼の目に掛かった前髪を払ってやろうとそっと手を触れると、突然の刺激に驚いた翡翠がわずかに緊張して身を引かれた。 <br />
<br />
「あっ……、すみませ…」 <br />
<br />
「……いや」 <br />
<br />
その物言いに、ついついムッとして眉を顰めてしまうのは、仕方のないことだろう。 <br />
<br />
大したことはない、などと口にはするものの、大したことがない風には到底見えない様子の彼の未だ困惑したように揺れる瞳を一瞥すると、所在なさげに宙をさまよいかけた腕を強く胸元に引き、シンはアスランの身体をかき抱くようにして後ろへと倒れこんだ。 <br />
<br />
アスランはシンを下敷きにして、胸や腹を密着させたまま真上からシンの顔を覗き込むような体勢になる。 <br />
<br />
「………あ、れ？」 <br />
<br />
「あの、さ、アンタさぁ。さっきから人が動く度にいちいち反応して、逆にこっちが壊れ物に触れるみたいで緊張するだろ」 <br />
<br />
「シン……ぁ、その、……悪い」 <br />
<br />
ふ、と。遠回しにながらもこの年下の少年の優しさが垣間見えたような気がして、アスランは自然笑みをこぼしてしまう。 <br />
<br />
と、同時に、何だか気恥ずかしいような気もしてきてしまい、頬が赤らむのを誤魔化そうと軽く首を横に振る。 <br />
<br />
「なーんか…ムカつく」 <br />
<br />
ぼそりとこぼした声はアスランにははっきりとは届かず、何だと顔を寄せてきたところを、シンはすかさず捕らえてその唇を奪った。 <br />
<br />
「っう、……んーっ！」 <br />
<br />
衝撃と息苦しさに思わず逃げかけた頭を、両手でガッチリと抑えられてアスランは呻く。 <br />
<br />
抵抗といった抵抗も出来ないままにシンの舌は熱っぽい意図を持ってアスランの唇をぬるりとなぞり、それから口内へと侵入して内部を蹂躙し始めた。 <br />
<br />
「ふ…っう……ん、…んっ」 <br />
<br />
たっぷりと時間をかけて貪りつくした後に、シンはようやくアスランを解放する。 <br />
<br />
と、同時に荒い息を繰り返すその頬はきれいな桜色に染まり、涙のにじんだ目許はいっそう艶っぽく、シンの熱情をたぎらせるに十分すぎるほどの効果を有していて。 <br />
<br />
キスひとつでここまで乱れるとは…。 <br />
<br />
いつものことだし、仕掛ければこのような反応が返ってくるのは分かってはいたことだったけれども。 <br />
<br />
それでも何だかもう我慢が効かないような気がして、シンは熱い吐息をそっと吐き出す。 <br />
<br />
「……アンタが、悪いんだからな」 <br />
<br />
「……え、なに」 <br />
<br />
ようやく得た酸素を求めることに夢中になっていた彼は、意味が分からないといった風に小首を傾げきて、そんな様子も可愛いななどと思ってしまう自分に少々頭が痛いような気もしたのだが。 <br />
<br />
「何でもねぇよ」 <br />
<br />
この際、欲望に負けて全部流してしまうことにした。 <br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
真っ暗な視界の中唐突に触れられる感覚は、アスランに少なからずの恐怖を植えつけた。 <br />
<br />
相手の全てが見えないという、恐怖。 <br />
<br />
スーツのファスナーに手をかけられ、その降りる音や指の動き如何から、服をくつろがせようとする意図がありありと感じられたが、しかしアスランはこれといった抵抗も見せず、シンの思うままにさせてやる。 <br />
<br />
自分がこの年下の少年に対してはひたすら甘いのだということは、常々よくよく理解していたのだったが、しかし今はそれよりも、自分の内にこもるこの熱を彼にどうにかして欲しかった。 <br />
<br />
スーツを剥ぎ取られ、身につけるものが下着１枚になってしまうと、熱は変わらずこもっているものの、さすがに肌寒いような気がしてくる。 <br />
<br />
そのままインナーをまくられ無遠慮に触れてくる手のぬくもりが温かく心地良いようで、やはり少し恐怖でもあり。 <br />
<br />
その様子を見て取ったのか、シンが彼の名を優しく呼ぶ。 <br />
<br />
何度も何度も、囁きかけるように、優しく呼ぶ。 <br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
「シン……」 <br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
いつの間にか体勢は入れ替わり、アスランの背は硬い石の地の上に寝かされていた。 <br />
<br />
身に纏う布はすべて剥ぎ取られ、外気にさらされた太腿の付け根の辺りをシンの掌が行き来している。 <br />
<br />
その内に、生暖かい何かがそこに触れた。 <br />
<br />
軽い痛みを覚え、そこを吸われたのだと気づく。 <br />
<br />
目で見えない分感覚は研ぎ澄まされているため、わずかな刺激にも身体は過敏に反応していった。 <br />
<br />
「…ほんと、やらしい人」 <br />
<br />
揶揄するように放たれた言葉にゾクリと肌があわ立ち、そうして文句を口にしようと開いた口は、しかしそのすぐ後で後腔にはわされた指の為に喘ぎへととってかわる。 <br />
<br />
「うぁ…や、め…っ、…く…ぁ、…あぁ！」 <br />
<br />
飲み込んだ指がある一点を掻いた瞬間、訪れた快楽に、アスランの腰が強く跳ね上がる。 <br />
<br />
途端に上がった自身の高い声に驚いて自らの手で口許を覆うと、快楽に耐えるように眉根を寄せて静かに瞳を伏せた。 <br />
<br />
まるで全身が性感帯になってしまったかのような感覚に、理性すらも吹っ飛びそうになる。 <br />
<br />
シンの指に擦りつけるようにして無意識に揺れる腰を、アスランにはどうすることもできない。 <br />
<br />
早く彼を中に欲しくて、欲しくて堪らなくて、甘い息を吐き出しながらアスランはシンの腕に爪を立てた。 <br />
<br />
「シンっ…も…、いれ、ろ…！」 <br />
<br />
「……アス、ラ、…さ…」 <br />
<br />
こちらも興奮に熱い息を吐きながら、広げるように幾度も出し入れしていた指をずるりと引き抜くと、自身の猛りに指を沿え、何度か迷うように入り口付近を辿りながら内部へとゆっくり挿入していく。 <br />
<br />
待ち望んでいた刺激に、全身が強く震えてしまう。 <br />
<br />
すぎる快楽と刺激と情欲は、痛みさえも伴って彼らを襲った。 <br />
<br />
ちょうど先端部分をすべて飲み込んだ辺りで一度動きを止め、体勢を整えると、シンはアスランの白い脚を両肩に抱え、尻ごと持ち上げるようにして身体を折り、上から体重をかけるようにして自身を深く埋め込む。 <br />
<br />
身体の下から苦しそうに漏れる喘ぎを聞き流しながら快楽をやり過ごし、しかし余裕のないままに、それでも何度か行きつ戻しつしながら夢中で腰をすりつけていった。 <br />
<br />
今ではもう慣れた行為とはいえ、挿入時の衝撃というものはやはり辛いらしく。 <br />
<br />
気がつけばすぐ目の前にある愛しい人の顔は、汗と涙と快楽とでくしゃくしゃになっていて。 <br />
<br />
「はぁ…アス、ラン…」 <br />
<br />
乱れる息の中優しく名前を呼んでやると、硬く閉じられていた翡翠がそろりと覗く。 <br />
<br />
しかし焦点の合わない双眸は頼りなく揺れるばかりで、見ていてひどく痛々しい。 <br />
<br />
相手の姿が映らない不安からか、アスランは覆い被さるシンの身体を自身へと強く引き寄せてきた。 <br />
<br />
「シン…っ、シ…ン…」 <br />
<br />
ますます力のこもる身体を、これでは少々辛いからと、優しく宥め撫でてやる。 <br />
<br />
そうして額にひとつキスを落とすと、ようやく安心したかのように強張っていた身体が少しだけ弛緩した。 <br />
<br />
もう大丈夫だろうかと試しに腰をゆすってみると、即座に反応が返ってきて。 <br />
<br />
彼が息を詰めるほどに強く優しく締めつけてくるものだから、思わず一瞬達してしまいそうになった自分を叱咤しつつ、今度は激しく抽挿を開始した。 <br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
轟音と振動で目を覚ます。 <br />
<br />
付近でたいていたはずの火は消え、自分たちが身を寄せていた場所への入り口からは強い日差しが差し込んでいた。 <br />
<br />
「もう朝か…」 <br />
<br />
「朝ではなくて昼だ、シン」 <br />
<br />
眠い目をこすりながら起き上がった彼は、途端にあびせられた低い声の主に気づき、にわかにその身を硬直させた。 <br />
<br />
その一方で、彼の愛しい人は彼のすぐ隣で未だ深い眠りの中にいる。 <br />
<br />
衣類をすべて脱ぎ捨てたままで。 <br />
<br />
「あ、のっ、レイ！これは、その…っ」 <br />
<br />
「別に言わなくていい」 <br />
<br />
明らかにヤッてましたといわんばかりの状況証拠に慌てて弁明しようと試みたシンであったが、どうやらそれは無駄で不要な足掻きらしかった。 <br />
<br />
「…えっと…その、迎えに来てくれたんだよ、な」 <br />
<br />
「そうだ。艦長に報告しなければならないからさっさと服を着て準備をしろ。救援ボートを出してもらう」 <br />
<br />
言い終わると同時に愛機のザクへと向かうレイを見送ると、シンはアスランを起こしにかかる。 <br />
<br />
「アスランさん、ほら、救助が来ましたよ」 <br />
<br />
「んん――…」 <br />
<br />
元来寝汚い彼はぬくもりを求めてシンの身体へと絡みつく。 <br />
<br />
その様子に若い身体はすぐに反応し、これはさすがにマズイと思って視線をそらせた先にレイの座った瞳があった。 <br />
<br />
「………あ」 <br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
その後、助けが必要ないのなら帰る、とその場を立ち去ろうとするレイをシンが必死になだめようとしたことは言うまでもない。]]>
    </description>
    <category>種運命</category>
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    <pubDate>Mon, 10 Jul 2006 14:58:49 GMT</pubDate>
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    <item>
    <title>片恋（塚不二）</title>
    <description>
    <![CDATA[＊過去話捏造<br />
＊手塚九州行きのお話です<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
甘い花の芳香に誘われて不二はそこに足を踏み入れた。足許にはピンクの絨毯が一面に広がっており、敷き詰めらた花弁が芳しい匂いを放っている。<br />
辺りは騒がしかった。<br />
小鳥のさえずり、草木の揺れる音、そして、何かが抜けるように弾ける音。<br />
最後のそれを不思議に思い、不二は音のする方へと歩いていった。茂みだらけの道を掻き分け、広場のようなところに出る。<br />
そこにそれはあった。一心不乱に腕を振り続ける少年。まだ幼い。不二と同年くらいであろうか。<br />
少年はふと止まり、茂みにいる不二を振り返った。<br />
不二は驚いた。そして驚きのままに踵を返して走り去った。驚いた。<br />
心臓が早鐘のように脈打っている。<br />
だって、綺麗だったのだ。綺麗過ぎて驚いたのだ。不二に気づき振り返った少年の漆黒が、脳裏に焼きついて離れない。<br />
彼に顔を見られたろうか。<br />
不二はそこかしこに突き出ている鋭い木枝で柔らかい肌が傷つくのも厭わず、茂みの中を一気に駆け抜けた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<strong>片恋</strong><br />
<br />
<br />
<br />
<br />
筆記用具をすべらせていた手をふと止め、不二は窓の外を見た。<br />
とても静かな夜だ。窓枠に隠れるようにしてあわやかな月が浩浩としている。<br />
不二はため息を吐いた。<br />
どうして。<br />
何がどうしてこうなってしまったのだろう。<br />
<br />
始まりはいつだったのか。<br />
彼が氷帝戦の折に左肩を壊したときだったか。<br />
２年と少し前、ステージに立ち、とても中学に上がったばかりの子供とは思えぬ様子で彼が総代を務めたときだったか、それとも。<br />
如何にせよ、何かが始まってしまったことは確かであった。<br />
運命の歯車が廻り始めた――とは、小説如何で良く目にする決まり文句だったけれども。<br />
まさにそういうことなのかも知れなかった。<br />
<br />
<br />
不二がその日、人気のない道へと進んで行く彼を目にしてしまったのはあるいは不幸だったのかもしれない。<br />
日直の不二が体育の授業に使ったコーンやらメジャーやらを片していると、少し離れた位置に横たわる渡り廊下を馴染みの顔が通っていく。手塚、と声をかけようとして、彼の視線が何かを捉えていることに気がついた。<br />
真っ直ぐで長い黒髪が美しい少女。<br />
不二は何だ。嫌な場面を見てしまったと息を吐く。<br />
しかしそういう不二もこういう――いわゆる告白の場面に立ち会うことは少なくない。<br />
見目や振る舞いの柔らかさに憧れるのか、彼女たちは不二に向かって必死な様子で愛を囁きかける。<br />
否、恋と呼ぶべきであろうか。<br />
不二には何がそんなに「好き」なのかが解らなかった。<br />
不二も人間である。好意を寄せられて嬉しくないわけはなかったが、かといってそのような感情を実感できるわけでもなかった。<br />
一度気紛れで自分の何が好きなのかと問うたことがあったのだが、しかし相手は困ったように俯くばかりで、ついぞ返答は得られなかった。<br />
つまり、そういうことなのだろう。<br />
彼女たちは不二という人間を理解した上で愛だの恋だのを囁きかけてくるわけではなかったのだろう。<br />
<br />
<br />
眼前の光景に視線を引き戻す。<br />
不二の位置からでは彼の表情などほんの少しも見えはしなかったが、少女が慌てて走り去ったところを見るだに彼は少女の想いを受け流したようだった。<br />
当たり前だ。彼の中に少女のような存在が入り込める隙などあるわけがない。<br />
彼の中はテニスと勉強で９割以上が占められている。彼を長年見てきた不二だからこそ、確信して言える事実であった。<br />
「手塚」<br />
軽く項垂れた様子の背中に声を掛けるととんだ顰め面で鋭く睨まれた。彼のこの表情は不二の大変な気に入りである。<br />
「災難だったね。誰？１組の女の子？」<br />
「どうしてお前がここにいる」<br />
嫌だなあ、別にコソコソと後をつけてきたわけじゃないよと不二はうそぶく。<br />
「僕は僕の用事でここにいるだけ。で、誰？」<br />
「――委員会で共に仕事をしている女生徒だ」<br />
『女生徒』とは、なんと手塚らしい言い回しであろうか。<br />
ふうん、と気のない返事で不二は手塚に触れた。肩、腕、指。<br />
確かめるように。<br />
「こんな朴念仁のどこがいいんだって思うけどねえ。ま、君は見目がいいし、才能もあるから女の子たちが寄って来るのは仕方がないのかな」<br />
でも、解っていないよね。不二は言った。<br />
そうだ。解っているわけではない。自分の時と同様、彼女に同じ問いを投げかければ同じ様な反応が返ってくることだろう。<br />
彼女たちもまた、手塚という人間を理解した上で告白を挑んでくるわけではないのだ。<br />
いわば手塚はステータスだ。彼女自身を満足させるための。<br />
そんなくだらないもののために彼は彼の貴重な時間を侵されている。害だ。迷惑だ。<br />
……目障りだ。<br />
不二の言葉に手塚がさも解らないという風に首を傾げる。曰く何が『解っていない』のか、と。不二はムッとした。<br />
「何がって、そういうところが、だよ」<br />
手塚の思考を腹立だしく感じた。<br />
それはある種の裏切り、または絶望にも似ていたろうか。<br />
不二はそのまま踵を返すと、手塚をその場に捨て置いて教室へと戻った。一度も振り返らずに。強い歩調を保って。<br />
物言わぬ手塚の視線を痛いほど背中に感じたのだが。<br />
気分が昂り、頬が紅潮していた。<br />
<br />
<br />
午後の部活で不二は荒れた。<br />
力任せにボールを打ち込んだり、えげつないコースを好んで狙ったりと。<br />
平素では到底考えられないことだった。<br />
不二は同輩からも後輩からも物腰の柔らかく温かい人間だと思われている。そういう様に彼が繕ってきた。<br />
しかしその日の不二の様子は誰の目から見ても不機嫌が明らかで、自然不二の周りには空気ばかりの大円が描かれたのだった。<br />
肩で息をつく不二に声を掛けようとする者はいない。不二の親友を自称している菊丸でさえ、大石の陰に隠れて友人を凝視するばかりである。<br />
こんな不二に唯一声を掛けられる人間があるとしたら、それは彼以外にありえなかったであろう。<br />
「不二」<br />
彼は呼んだ。不二は緩慢な動作で彼を見た。<br />
「部室へ」<br />
それは命令。至極静かであって強かな。不二は無言で彼の後ろに従った。<br />
部員たちが遠巻きに彼らの様子を伺い見ていた。<br />
<br />
<br />
「どういうつもりだ」<br />
「何が」<br />
日が正面から入らないような造りになっている部室は、昼過ぎでも電気をつけなければ薄暗く感じられた。彼の顔に纏わる陰影が動く度にゆらゆらとしていて面白い。不二は純粋にその様子を楽しんでいた。<br />
窓が締め切ってあるため蒸し暑く、背中に汗がじんわりと滲むのを感じる。<br />
どうやら窓際に陣取った手塚は、暑いので窓を開けるといった機転の利かない質らしい。<br />
空は青く清清しいのに、部室の中だけが湿度で別世界に切り取られたように思えて可笑しいと不二は笑んだ。手塚の眉宇が顰められる。<br />
「あんなテニスをして、お前は何を考えているのかと聞いている」<br />
手塚の強い視線は不二の好むものであった。<br />
話の内容はともかく手塚の綺麗な顔立ちやら、やたら真っ直ぐ見据えてくる漆黒の双眸などが視界に飛び込んでくるので不二は話に集中できなかった。<br />
不二、と再度手塚が嗜めたので、不二は聞いてるよと言った。<br />
そんなに怖い顔などしなくても。<br />
「君の気分を損ねたのなら謝るよ。体調が悪かったんだ。あんなテニスをしてしまって、皆にも嫌な思いをさせたよね。ごめんね」<br />
淡々と、ただ穏やかな口調で、しかしいつものような笑顔は見せずに言う。<br />
手塚の顔が目に見えて険しくなる。しかし彼はそれ以上の追求をしてこなかった。したところで不二が相手では時間の無駄だと解っていたのかもしれない。<br />
そうか、と短く吐き捨てると去り際に「気をつけろよ」などと残してくれたものだった。<br />
まさか不二の話を鵜呑みにしたわけでもあるまいに。<br />
誰もいなくなった部室で不二は手塚の消えたドアをいつまでも眺めていた。<br />
やがて部員たちが戻ってくる頃になると、不二はようやく動き出した。<br />
心ここにあらずといった様相で不二は帰宅したのだった。<br />
<br />
<br />
彼と初めて会ったのは、入学式後の桜舞い散る裏庭であった。否、「初めて会った」というより「初めて向き合った」という表現のほうが正しいのかもしれない。<br />
手塚と不二はその昔、たった一度だけまみえたことがあったのだから。<br />
不二も手塚もお互いに幼かったし、ほんの一瞬ともいえる時間でしかなかったので覚えていないのも無理からぬことではあったが。<br />
しかし不二はひとめ見た瞬間に彼だと分かった。<br />
新入生総代を務める彼の姿を見て瞠目した。<br />
だからこそ彼の後を追って人気のない裏庭になど足を運んでみたのだ。<br />
「桜、綺麗だね」<br />
不二は話しかけた。<br />
相手は不二に気づいて振り返り、いったい何だろうといった様子で不二をじっと見つめた。<br />
「君、さっき総代やってた子だよね。すごいな。今年の入学試験では満点が出たって先生たちが話しているのを聞いたからそれって君のことだよね。勉強好きなの？スポーツは何かやっているの？」<br />
手塚はじっと無言でいた。不二はいろんな意味で硬そうな子だなと思わないでもなかったが、得意の笑顔を作ってにこにこと相手の返答を待った。<br />
「満点だったかどうかは分からない。勉強は嫌いじゃない。スポーツはテニスをやっている」<br />
手塚はひとつひとつの問いに、まるで一問一答のような答え方をした。不二は面食らった。<br />
曰く変な子供だな、と。<br />
「へえ、テニス」<br />
そういえば、彼を最初に目にした時に、彼はラケットのようなものを持ってはいなかったか。<br />
不二は記憶の中を探ってみる。<br />
「それじゃあ入る部活はもう決めているの」<br />
「ああ、テニス部に入ろうと思っている」<br />
そう言った手塚の顔がほんの少し楽しそうに見えたので、不二もテニスというスポーツに俄の興味が沸いた。<br />
この無表情を歪ませるほどの魅力を持ったスポーツ。面白そうだ。<br />
不二は生来大した努力という努力をせずとも大抵のことはこなせる人間だったので、これといって強く興味を惹かれるものなどないように思えた。<br />
しかしテニスは別物かもしれない。面白いものなのかもしれない。手塚を見てそう思った。<br />
万が一テニスがどうにもつまらないものであったとしても、手塚が一緒ならばそれも楽しめるかもしれない。<br />
不二はそのとき心に決めた。<br />
数日後、テニスコートに集まった進入部員の顔ぶれを見た彼が不二に気づいて軽く首をかしげたのが不二には印象的だった。<br />
交わした会話は数えるほどであったし、クラスも違ってしまって会う機会もなかった彼が自分を覚えていてくれた。嬉しい気持ちがした。<br />
更に彼は強かった。なるほど、テニスが好きだと顔を歪ませるだけの実力が彼には備わっていた。<br />
そのお陰で上級生には煙たがられているようなきらいもあったが、彼はまったくそんなことなど意に介していないようだったので、不二も何食わぬ顔を装っていた。<br />
彼とはすぐに仲良くなった。<br />
あの鉄面皮が慣れてくると、会話の合間にちらほらと笑顔を見せるようにもなった。<br />
春は過ぎ、緑が萌え広がり、暑い日差しとともに夏がやって来ようとしていた。<br />
<br />
<br />
机上でため息をつくと、どうしようもなく鬱屈した気持ちになった。<br />
誰だったか昔、ため息をひとつ吐くごとに幸せがひとつ逃げると言った人がいたっけな。ボンヤリと考える。<br />
窓から見える月があまりに黄色いように思えて、不二は何だか嘘くさいと思った。<br />
本のページをめくる。読んでいる小説の話が頭に入ってこない。<br />
先ほど勉強をしていてもあまりに意味がなかったので息抜きにと始めた読書であったが、好きな作家のそれであってもまったく気紛れにもならなかった。<br />
どうやら今夜はそういう気分であるらしい。<br />
不二は本を閉じ、またひとつ大きなため息を吐き出した。<br />
「まったく、何で僕がこんな思いをしなきゃならないんだ」<br />
脳裏に浮かんだ顔を恨めしく思う。<br />
鉄面皮。<br />
まったくもって恨めしい。<br />
彼さえいなければ自分はこんな気持ちになどなることはなかったろうにと不二は吐き捨てたい気持ちだった。<br />
しかし、彼のことを思うと自然身体が熱くなる自身のことも、不二はよく理解している。<br />
「真剣勝負とはこういうものだよ」<br />
これはかの氷帝戦の折に部員たちに言って聞かせた言葉だった。負傷した手塚に持久戦をたたきつける相手選手に対して部員たちが罵ったのを諫めた言葉である。<br />
しかし不二自信納得のいかない気持ちでもあった。<br />
どうしてそんな勝負をするのだろうと。<br />
手塚も手塚だ。ここで意地を張って取り返しのつかない負傷を負うよりも、控えの後輩に任せてしまえば良いものを。<br />
どうせ相手チームの控えの選手になど、あの勝気な後輩が負けるはずないのだから。<br />
そんなにまで頑なに意地を張ったところで何の意味があるのかと、不二は再三問いただしたかった。<br />
結果手塚は敗北の上重傷を負い、遠い九州へとはるばる治療のために旅立つはめになった。<br />
全国大会を眼前に、部員たちを置き去りにして。<br />
「まったく…」<br />
ため息と共に不二は繰り返した。<br />
どうしてこんなことになってしまったのだろう。そればかりが頭の中を支配する。<br />
明日、手塚が帰ってくる。<br />
休学の手続き等の一時的な滞在ではあったが、当然部活にも顔くらいは出すのだろう。<br />
不二は明日どのような顔で手塚に会ったら良いものかと机上でえんえん思いあぐねていた。<br />
<br />
<br />
空は抜けるように青く、高い。<br />
日本の夏独特の湿気が不快に思わなくもなかったが、天候としてはなかなかの部活動日和である。<br />
久々に姿を現した部長に、部員たちは気の引き締まる思いで部活に臨んでいた。<br />
つい先程までミスばかり繰り返していた菊丸が「たるんでいる」との一喝で校庭を１０周させられたのが効いているのかも知れない。<br />
不二は遠目から何度も手塚の様子を伺い見ていた。<br />
さすれば視線がかち合うのも道理というもので。<br />
気づいたときにはもう遅く、手塚が不二めがけて一直線に歩いてくる。<br />
不二は逃げ出したい気持ちに駆られた。<br />
「不二」<br />
久方ぶりに呼ばれた名前に一瞬背筋がゾクリとした。<br />
不快なのではなく、これはきっと。<br />
「話がある。部活後少し、居残ってくれないか」<br />
「別に、良いけれど」<br />
何食わぬ顔を装ってはいるが、内心心臓が張り裂けそうであった。<br />
ああ駄目だ。酸素が薄い。先程からどういうわけだか呼吸が上手くいかない気がする。<br />
胸が苦しい。<br />
近寄らないで、空気に溺れてしまいそう。<br />
熱く混乱する不二を残し、それではまたと手塚が去っていく。<br />
手塚が不二に背を向けた瞬間不二の呼吸が戻り、生き返ったかのような心地がした。<br />
手塚の背中を見つめながら、不二は昨夜の思考を反芻する。<br />
――こんな思いを、この先ずっと続けるくらいなら。<br />
いっそ全てを吐き出して終わりにしてしまうのも良いのかも知れない。<br />
ため息がこぼれた。<br />
<br />
<br />
人気のなくなった部室は哀愁ばかりが漂っていて、これがそういうものなのかと不二は思った。<br />
数年後ここの空気を吸ったならば泣いてしまうかもしれないな、と。<br />
部員たちがいなくなってから大分時間が経っていた。<br />
日も傾き赤焼けの空が覗いている。<br />
ロッカーに残っていたぬくもりさえももう全て払拭されてしまっただろう。<br />
不二は手塚を見遣る。<br />
そうして放っておけばいつまでも口を開きそうもない相手に話は何かと切り出した。<br />
手塚は言った。<br />
「不二の気持ちが知りたいのだが」<br />
「………え？」<br />
あまりに唐突で不可解な展開に、不二は当然のことながら瞠目した。<br />
手塚は感情の見えない表情で黙々と続ける。<br />
「今日久しぶりに不二の顔を見たら、何となく、どうしても聞いてみたくなったんだ。お前が俺を、どう思っているのか」<br />
「何……だよ、それ？」<br />
不二はこの機会に手塚へ自分の気持ちを打ち明けるつもりでいた。<br />
だがしかし、手塚がまさかこんなことを言い出すとは思ってもみなかったので、不二は躊躇い、そうして少々かわしてみることにした。<br />
「君の意図するところが解らないのだけれど？」<br />
「そんなことなどどうでも良いだろう」<br />
「…………」<br />
ねえ、と、不二はふと浮かんだ考えを、まさかと思いながらも口にする。<br />
「それって、告白？」<br />
手塚はしばし考えるようにしてから、「そうかもしれない」と言った。<br />
そんな手塚のとぼけたような様子に、不二は何もかもが馬鹿らしく思えてきて。<br />
一瞬零しそうになった涙を堪え、微笑った。<br />
<br />
<br />
「九州にはいつ頃戻るの」<br />
不二の問いかけにあと２、３日だと答えながら手塚は身繕いをしていた。<br />
「２、３日かあ。じゃあ明日、少しだけ僕に時間をくれない？行きたい場所があるんだ」<br />
「それは構わないが」<br />
しかしそれはどういった場所なのかと聞きた気な様子の手塚に不二は笑って行ってみれば分かるとだけ言った。<br />
「いいところだよ」<br />
「そうか、それは楽しみだな」<br />
先程まで熱い情交を交わしていたとは思えぬストイックさで手塚は言った。<br />
手塚は眼鏡を外すと変わると思う。<br />
あの真っ直ぐな眼差しがレンズを通さないで直に届くと、不二はどうしようもなくやり過ごせないほどの情動を駆り立てられるのだった。<br />
手塚のレンズはいわばオブラートであったろう。苦い薬を包み込んだ甘い甘いコーティング。たまらない。<br />
翌日部活動の後、校門で待ち合わせてその場所に行こうと約束事が取り決められた。<br />
手塚は手続きの書類うんぬんで部活動には顔を出せなかったので。<br />
<br />
<br />
春先には花弁で埋め尽くされるその場所は、今は緑でいっぱいだった。<br />
あの頃は胸の近くまで圧迫してきた例の茂みは、今では不二の腰元にも及ばないくらいになっている。<br />
不二は懐かしんだ。<br />
「ここは…」<br />
手塚は驚きを隠せないようだった。<br />
それもその筈、ここは公園のある一角を入り口として、手入れのされていない茂みを抜けていかなくては辿り着けない場所なのだ。<br />
このように日常から離れたような空間を知っている人間は少ない。<br />
ここは彼のいわば秘密基地であったのだろう。<br />
「ここでね、僕は初めて君を見つけたんだ」<br />
不二は笑った。<br />
手塚は驚いたように不二を見た。<br />
「君はきれいな動きでラケットを振るっていて、思わず眸を奪われた。僕はしばらく君の背中を眺めていたのだけれど、そのうち気づかれて、振り返った君に驚き走って逃げた」<br />
懐かしいでしょうと不二は笑う。不二は楽しそうだった。<br />
記憶の世界に浸りきっている不二の耳に手塚の呟きが聞こえなかったのは無理もない。<br />
「そうか…、お前、が…」<br />
あまりに素早い反応だったので、顔までは伺い見ることが出来なかった。<br />
あれはもう幻であったのだったと言い聞かせては記憶の底に封じ込めていたというのに。<br />
あの日、手塚と不二は初めて出会い、そうして互いに思いが芽生えた。<br />
しかしその時の思いと記憶は、運命の悪戯によって、長くすれ違ってしまっていたのだった。<br />
「…そうか……」<br />
口を押さえて頬を染めた手塚の様子になど、不二はまったく気づかなかった。<br />
<br />
<br />
喧騒の中に凛とした女性のアナウンスが混じる。不二の座る席の前には手塚の少ない荷物が鎮座していた。<br />
まだかな、と腕をあげては時計を覗く。手塚が席を外してからもう随分と経っているような気がする。<br />
「手塚」<br />
人込みの向こうに見知った顔を目ざとく拾い、不二は呼びかけた。<br />
それに気づいた手塚は小走りに不二のもとへと歩み寄る。<br />
「すまない、待たせたな」<br />
「ううん。もう搭乗手続きは終わったの？」<br />
「ああ。それでこれ…」<br />
手塚はポケットの中から何やら取り出すと、ぶっきらぼうにそれを突き出した。<br />
「何これ…花？」<br />
「何か記念になるものをと店を探してみたのだが、良いものがみつからなくてな。ちょうどそれが目についたので少々失敬してきた」<br />
「手折ってきたの？」<br />
呆気に取られた様子の不二に、気に入らなかったかと手塚は呟く。<br />
不二は咄嗟に首を振って嬉しいと笑った。<br />
「手塚が贈り物とか珍しいなって思っただけ。すごく嬉しいよ。大切にする。乾燥させてしおりにでも加工するね」<br />
「喜んでもらえたのなら良かった」<br />
手塚はそう言うと腕の時計をちらりと見、もう行く、とだけ短く言った。<br />
「早く治して帰って来てね」<br />
「ああ」<br />
別れの会話はこれだけだった。<br />
<br />
<br />
轟音と共に飛び立つ機体を不二は見送る。青い空の中にそれは飲み込まれていった。<br />
まるで彼のこれからを暗示するような清清しい青だった。<br />
手元に遊ぶ小さな花に顔を寄せると、甘い甘い匂いがした。<br />
<br />
あの、淡い記憶にあるような。]]>
    </description>
    <category>庭球王子</category>
    <link>https://idumino.blog.shinobi.jp/%E5%BA%AD%E7%90%83%E7%8E%8B%E5%AD%90/%E7%89%87%E6%81%8B%EF%BC%88%E5%A1%9A%E4%B8%8D%E4%BA%8C%EF%BC%89</link>
    <pubDate>Mon, 10 Jul 2006 03:14:09 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>TSOG（塚不二）</title>
    <description>
    <![CDATA[＊告白と誘惑のお話<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
窓の外にある大木から影をもらった。<br />
教室の扉がカラリと開く。<br />
手塚は無言でそれを見つめ、<br />
「ごめんね、突然呼び出したりして」<br />
視界の端、床で揺れる茶色い影と学生服のきしんだ感触にほんの一瞬気をとられながらも<br />
「僕の勝手な都合で大変申し訳ないんだけれど、どうしてもこれだけは君に伝えておきたくて」<br />
彼の言葉に意識を向ける。<br />
少し空いた間に苛立ちを覚え、目線で言葉の先を促してやると、<br />
ついに彼は言ったのだった。<br />
「君が、好きです」<br />
と。<br />
放課後の閑散とした学校内の一室で、<br />
ささやかに、<br />
そしてとてもゆっくりと時は流れている。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<strong>the song of gondola</strong><br />
<br />
<br />
<br />
<br />
「…それは一体何の冗談だ、不二」<br />
「えっ嫌だなあ。冗談に聞こえた？」<br />
手塚は彼の栗色の双眸が細んで見えなくなるこの表情が好きであったが、今この状況でされるべきものではないなと思う。<br />
「これのどこが冗談でないというんだ」<br />
「うーん、唐突だったことは謝るけどね…」<br />
不二は手塚を通り越して窓の前に立ち止まると、<br />
視線は校庭で走り回る下級生たちのもとに、意識は大きく手塚に向けて<br />
「…ゴンドラの唄って知ってる？」<br />
「いや、聞き覚えがないな」<br />
その返答に手塚の方へと顔を向け、<br />
<br />
「いのち短し　恋せよ少女<br />
朱き唇 褪せぬ間に<br />
熱き血潮の 冷えぬ間に<br />
明日の月日は ないものを」<br />
<br />
唄って、微笑う。<br />
「いい詩でしょう？気に入ってるんだ」<br />
「…何が言いたい」<br />
「……さて、ね…」<br />
その時校庭でワッと歓声が上がった。<br />
試合終了間際、サッカーゴールにボールが転がり込んだらしかった。<br />
不二は再び唄い出し、<br />
唄いながら、<br />
ゆっくりと、<br />
手を伸ばせば届く位置まで手塚に近寄った。<br />
<br />
「いのち短し　恋せよ少女<br />
朱き唇 褪せぬ間に<br />
熱き血潮の 冷えぬ間に<br />
明日の月日は ないものを」<br />
<br />
手塚はその歌声に誘われるかのように不二の唇へと視線を移す。<br />
朱い。<br />
とても朱い。<br />
朱い唇は発色が良く、しっとりと濡れていて、<br />
一端視線を奪われてしまうとなかなかどうして取り戻せない。<br />
手塚の目は不二の唇に釘付けになった。<br />
<br />
「いのち短し　恋せよ少女<br />
いざ手を取りて　彼の舟に」<br />
艶やかに唄う不二の手が手塚に触れる。<br />
<br />
「君が柔手を　わが肩に<br />
ここは人目　ないものを」<br />
彼のしなやかで白い手は、唄の通りに動いていく。<br />
そして、彼は、<br />
朱き朱き唇を手塚のそれに―――<br />
<br />
そっと寄せた。<br />
<br />
<br />
「いのち短し　恋せよ少女<br />
黒髪の色　褪せぬ間に<br />
心のほのお　消えぬ間に<br />
今日はふたたび　来ぬものを」<br />
<br />
最後のフレーズを唄い終わる頃までには、窓の外の音はいつの間にか消えてなくなり、<br />
重なり合った影が少しだけ濃くなっていた。]]>
    </description>
    <category>庭球王子</category>
    <link>https://idumino.blog.shinobi.jp/%E5%BA%AD%E7%90%83%E7%8E%8B%E5%AD%90/tsog%EF%BC%88%E5%A1%9A%E4%B8%8D%E4%BA%8C%EF%BC%89</link>
    <pubDate>Mon, 10 Jul 2006 03:13:02 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>金木犀（塚不二）</title>
    <description>
    <![CDATA[＊遠い遠い夢のお話<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
金木犀（キンモクセイ）が咲いたから。<br />
愛しいキミに会いにゆく。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<strong>金木犀</strong><br />
<br />
<br />
<br />
<br />
ふと気が付くと、木洩れ日の射す窓際の席で、手塚は穏やかな風を感じていた。読みかけだった本は開いたままで、その白いページの上にはゆらゆらと木の葉の影が揺れている。時計を見ると、ちょうど３時を過ぎたところだった。<br />
休日だというのに、校舎は騒がしい。<br />
部活に来ている生徒、勉強しに来ている生徒、はたまた全く関係のない他校の生徒までもが休日にも拘らず青学へと集まってくる。<br />
手塚はというと、久しぶりに部活のない休日を如何にして過ごそうかと散々悩んだ挙句、別段これといった用事もなかったので、居心地の良い学校へと足を運んでいたという次第だ。<br />
中でも図書館は、彼のお気に入りの場所だった。見聞を広める為にも最適な場所ではあるが、それ以上に何よりも、ここからは校庭から校外までの様々な景色が一望出来る。千変万化な景色を見ていると、時間という概念を忘れ、退屈を思う存分に凌ぐことが出来るのだ。<br />
そういえば、と彼は俄かに眉根を寄せる。<br />
さっき、何だか懐かしい夢を見たような･･････。<br />
「手塚？」<br />
と、そこで手塚の思考は中断される。<br />
ふと顔を上げると、色素の薄い髪が風で左右に揺れるのが見えた。<br />
「不二･･････か」<br />
たっぷりと間を持たせて手塚は呟く。不二はふわりと微笑みかけると、手塚の座っている目の前の席に静かに腰を下ろした。<br />
数冊の本をトントンと揃えて脇に置く。<br />
「奇遇だね、手塚。まさかキミにこんな所で会えるとは思わなかったよ。手塚もよく来るの、ここ？」<br />
「･･･ああ」<br />
ふうん、と軽く相槌を打つと、不二は横に置いた本の一冊を手に取ってパラパラとページを捲り出した。<br />
そのまま静かな時間が流れる。<br />
不二はどうして自分の目の前の席なんかに座ったのだろう、と思いながら、手塚も再び読みかけの本に視線を戻した。<br />
<br />
<br />
<br />
時間は既に４時を回っていた。気が付けば人の気配も少なくなっていて、窓から射し込む日の光も、どこか陰影を帯びているようだ。<br />
手塚が顔を上げるのと同時に、不二も自分の読んでいた本を閉じる。不二はそのまま無言で席を立つと、隣に積んであった別の本も持って、カウンターの方へと歩いていった。<br />
どうやら本を借りるらしい。<br />
さほど時間をかけずに、不二は再び手塚の元へ戻って来た。<br />
「さ、行こうか」<br />
「行くって、どこへ？」<br />
すると不二はほんの一瞬意外そうな顔をしてから、荷物を持ってにこりと微笑う。<br />
「そんなの決まっているじゃない。だって手塚ももう、帰るんでしょう？」<br />
<br />
<br />
<br />
バス停に辿り着く頃には、日もすっかり傾いていた。<br />
「ああ、すっかり暗くなっちゃったね。失敗したなぁ」<br />
「もう秋だからな。日が落ちるとなると、早い」<br />
「気温も冷たいしね」<br />
不二が手をこすり合わせるのを見ると、手塚も何だか肌寒いような気がしてきた。<br />
「―――――あ」<br />
と、突然不二が声を上げる。<br />
「どうした？」<br />
手塚は不二が見ている方向へと視線を向ける。<br />
そこに見えたのは、大きな橙の塊――・・・<br />
「あれ、金木犀だよね。道理でさっきからいい匂いがすると思った」<br />
「ああ、もうそんな季節か･･･」<br />
１０月の冷たい外気に揺れる橙は、甘い匂いで囁いているかのようだ。<br />
「――ねぇ手塚、知ってる？金木犀って、中国名で丹桂っていうんだよ」<br />
「丹桂？」<br />
突然の不二の言に戸惑いつつも、手塚は殊勝に問い返した。<br />
「丹桂はね、昔からよく贈り物の装飾品として使われていた花なんだ。だって、とてもいい匂いがするでしょう？ボクの読んだ中国のお話の中にはね、丹桂を使って求婚をした人もいたくらいなんだよ」<br />
「･･････そうか」<br />
甘い匂いが鼻腔をくすぐる。あまりに強い花の香に、手塚はだんだん酔ってきた。<br />
バスが来る。乗り込む。<br />
バスの中はガラガラに空いていたので、二人は敢えて奥の方の席に並んで腰を下ろした。<br />
アナウンスが聞こえ、バスはゆっくりとその重い車体を揺らし始める。心地良い律動に身を任せると、すぐに眠気が襲ってきた。<br />
手塚のすぐ隣では、既に不二が穏やかな寝息を立ててしまっている。出来る事ならばこのまま手塚も眠ってしまいたかったが、二人とも寝てしまっては乗り過ごしかねないので、何とか目を覚まそうと、ほんの少しだけ手元の窓を開けてみた。<br />
冷たい風が頬を薙ぐ。<br />
じんわりと、身体中の神経が研ぎ澄まされていくのを感じる。<br />
花の芳香が強くなる。手塚の視界に一面の橙が広がった。<br />
いっそう強い風が吹き、花はちらちらとその身を散らせていく。<br />
その中のひと房が、窓のわずかな隙間を縫って、バスの中へと滑り込んできた。<br />
そうしてそれは、軽く上向きに開かれたままの不二の掌へと落ちていく。<br />
微かに、隣で不二が微笑ったような気がした。<br />
<br />
―――丹桂はね、昔からよく贈り物の装飾品として使われていた花なんだ。<br />
<br />
不二の声が蘇る。<br />
夢見心地になりながら、手塚は不二の寝顔をまじまじと眺めた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
目を閉じて、夢の中へと埋没していく。<br />
遠い遠い、記憶の欠片――<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
眼前に広がるは、大きな屋敷の大きな門。<br />
鹿毛を降り、袴摺の裾を直しながら、彼は再びその門を見つめた。<br />
手にはしっかりと握られた、丹桂の花。<br />
彼はゆっくりと、しかし着実に、門との距離を縮めていく。<br />
<br />
約束通り、丹桂の花が咲いたから。<br />
愛しいキミに会いにゆく。<br />
<br />
この花を、わたしの言の葉と共に。<br />
愛しいキミへ、捧げよう。]]>
    </description>
    <category>庭球王子</category>
    <link>https://idumino.blog.shinobi.jp/%E5%BA%AD%E7%90%83%E7%8E%8B%E5%AD%90/%E9%87%91%E6%9C%A8%E7%8A%80%EF%BC%88%E5%A1%9A%E4%B8%8D%E4%BA%8C%EF%BC%89</link>
    <pubDate>Mon, 10 Jul 2006 03:12:13 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">idumino.blog.shinobi.jp://entry/14</guid>
  </item>
    <item>
    <title>幸せな時間（塚不二）</title>
    <description>
    <![CDATA[＊お花見に来ました<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
「桜を見に行こうか」<br />
そう言って最初に君を誘ったのは、僕のほう。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<strong>幸せな時間</strong><br />
<br />
<br />
<br />
<br />
日曜日の朝、バスケットを抱えて僕と手塚は青春台公園へと来ていた。<br />
花見をするには絶好な小春日和。<br />
僕と手塚はしばらくの間恋人の距離で並んで歩いて、それから近くのベンチに腰を下ろした。<br />
「満開だねぇ、桜」<br />
「鮮やかだな」<br />
２人の間に会話が少ないのはいつものことだから、僕はさほど気にも留めずにぼんやりと頭の上の桜の大木を眺めていた。<br />
<br />
<br />
お天道様が真上辺りまで昇ってきたので、僕は持ってきていたバスケットを手塚の方に向けて開けてみせる。<br />
「今日のはね、手作りなんだ」<br />
「由美子お姉さんの、だろう？」<br />
相変わらず手塚は僕のことをよく分かっているらしく、そう言ってはポロリと零すような笑みを浮かべてみせた。<br />
<br />
<br />
「・・・で、何がどうしたらこうなっちゃうのかなぁ？」<br />
僕は灰色の桜を見上げながら、自分の上にのしかかってくる重みの主に問いかける。<br />
「最初に誘ったのは、お前の方だろう？」<br />
「・・・・・・花見はね」<br />
見た目とは違って意外に柔らかい手塚の黒髪がくすぐったく僕のはだけた胸の上でふわふわと揺れるので、僕はちょっと身を竦めてみせた。<br />
「夜でも桜は桜なんだね」<br />
僕がうわ言のように呟いたひと言を手塚は聞き流さなかったらしく、「当たり前だろう」と笑ってデコピンを返してくる。<br />
「ていうかお前、ちゃんと集中しろよな」<br />
「あは・・・ごめんごめん」<br />
<br />
<br />
夜桜をバックに僕たちは抱き合った。<br />
互いに睦言を囁きながら、時々２人で笑い合って。<br />
手塚は悲しい人だけど、その一方でとても優しい人だった。<br />
だから僕はもうしばらくの間だけでも、この恋人の優しさに甘えていようと密かに思ったのだった。]]>
    </description>
    <category>庭球王子</category>
    <link>https://idumino.blog.shinobi.jp/%E5%BA%AD%E7%90%83%E7%8E%8B%E5%AD%90/%E5%B9%B8%E3%81%9B%E3%81%AA%E6%99%82%E9%96%93%EF%BC%88%E5%A1%9A%E4%B8%8D%E4%BA%8C%EF%BC%89</link>
    <pubDate>Mon, 10 Jul 2006 03:10:34 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">idumino.blog.shinobi.jp://entry/13</guid>
  </item>
    <item>
    <title>飴色慕情（塚不二）</title>
    <description>
    <![CDATA[＊アメリカ留学ネタです<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
それはその刹那に、俺の双眸を焼きつけた。<br />
光に溶け込むように揺れる、飴色。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<strong>飴色慕情</strong><br />
<br />
<br />
<br />
<br />
「・・・おはよう、手塚」<br />
「・・・・・・」<br />
「よく、眠れた？」<br />
「・・・・・・」<br />
「・・・何か喋ってよ」<br />
「・・・・・・」<br />
「・・・・・・手塚？手塚部長？手塚国光くーん！？」<br />
「・・・・・・」<br />
ゴロン、と体勢を横向きに切り替える。<br />
校舎の中の空に一番近い場所で、飴色の少年はそんな俺の横顔を覗き込むようにはっとする程端正な顔を近付けてきた。<br />
「・・・ちょっと。キミには口という名の器官を使って意思の疎通を図ろうとかそういう心持ちが全くないわけ？」<br />
「―――少なくとも不二周助に関しては全くないな」<br />
「あ、そう」<br />
つまらなさそうに、呟く。<br />
<br />
遠くにチャイムが鳴り響く。<br />
「行かなくていいの、授業？」<br />
「・・・・・・」<br />
「行く気、ないんだ」<br />
「・・・・・・」<br />
青い青い大海原を泳ぐ海月のように、白い雲は気ままに戯れている。<br />
<br />
「さて、手塚君に質問です」<br />
「アメリカへ行くって、本当ですか？」<br />
<br />
遠くの金網が突風でガタガタとわななく。<br />
俺は何も言わなかった。<br />
飴色の眸はたった一度、緩やかな瞬きをすると、またすぐに柔和な笑顔の一部に変わった。<br />
「・・・アメリカ。行っちゃうんでしょう」<br />
「・・・・・・」<br />
「しばらく、会えなくなっちゃうね」<br />
綺麗な飴色の少年は、空の蒼に向かって大きく伸びをした。<br />
俺はやはり何も言わない。<br />
「あの・・・さ。もしかして君さ、僕が寂しがるとか思ってる？」<br />
「・・・・・・」<br />
「残念だけどね、僕は全然寂しくなんてないよ。結構…、平気」<br />
「・・・・・・」<br />
「・・・ねえ、何か言ってよ」<br />
「・・・・・・・・・うるさいぞ、不二・・・」<br />
「・・・なあに、それ」<br />
少年はくすくすと微笑った。<br />
<br />
「僕は君のこと、待ってなんかいないからね」<br />
「そんなこと、期待していない」<br />
「うん、そうだね・・・」<br />
飴色が近づく。<br />
俺たちは一度、軽いキスを交わした。<br />
<br />
「手塚国光は冷たい人だね」<br />
「不二周助は冷たいヤツだな」<br />
<br />
校舎の中で最も空に近い場所で、俺たちはひっそりと笑みを浮かべた。]]>
    </description>
    <category>庭球王子</category>
    <link>https://idumino.blog.shinobi.jp/%E5%BA%AD%E7%90%83%E7%8E%8B%E5%AD%90/%E9%A3%B4%E8%89%B2%E6%85%95%E6%83%85%EF%BC%88%E5%A1%9A%E4%B8%8D%E4%BA%8C%EF%BC%89</link>
    <pubDate>Mon, 10 Jul 2006 03:09:08 GMT</pubDate>
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