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2025.10.06 Mon
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2006.07.10 Mon
*お花見に来ました










「桜を見に行こうか」
そう言って最初に君を誘ったのは、僕のほう。




幸せな時間




日曜日の朝、バスケットを抱えて僕と手塚は青春台公園へと来ていた。
花見をするには絶好な小春日和。
僕と手塚はしばらくの間恋人の距離で並んで歩いて、それから近くのベンチに腰を下ろした。
「満開だねぇ、桜」
「鮮やかだな」
2人の間に会話が少ないのはいつものことだから、僕はさほど気にも留めずにぼんやりと頭の上の桜の大木を眺めていた。


お天道様が真上辺りまで昇ってきたので、僕は持ってきていたバスケットを手塚の方に向けて開けてみせる。
「今日のはね、手作りなんだ」
「由美子お姉さんの、だろう?」
相変わらず手塚は僕のことをよく分かっているらしく、そう言ってはポロリと零すような笑みを浮かべてみせた。


「・・・で、何がどうしたらこうなっちゃうのかなぁ?」
僕は灰色の桜を見上げながら、自分の上にのしかかってくる重みの主に問いかける。
「最初に誘ったのは、お前の方だろう?」
「・・・・・・花見はね」
見た目とは違って意外に柔らかい手塚の黒髪がくすぐったく僕のはだけた胸の上でふわふわと揺れるので、僕はちょっと身を竦めてみせた。
「夜でも桜は桜なんだね」
僕がうわ言のように呟いたひと言を手塚は聞き流さなかったらしく、「当たり前だろう」と笑ってデコピンを返してくる。
「ていうかお前、ちゃんと集中しろよな」
「あは・・・ごめんごめん」


夜桜をバックに僕たちは抱き合った。
互いに睦言を囁きながら、時々2人で笑い合って。
手塚は悲しい人だけど、その一方でとても優しい人だった。
だから僕はもうしばらくの間だけでも、この恋人の優しさに甘えていようと密かに思ったのだった。
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