各本文上部に説明と注意書きあり
(07/10)
(07/10)
(07/10)
(07/10)
(07/10)
(07/10)
2006.07.10 Mon
*告白と誘惑のお話
窓の外にある大木から影をもらった。
教室の扉がカラリと開く。
手塚は無言でそれを見つめ、
「ごめんね、突然呼び出したりして」
視界の端、床で揺れる茶色い影と学生服のきしんだ感触にほんの一瞬気をとられながらも
「僕の勝手な都合で大変申し訳ないんだけれど、どうしてもこれだけは君に伝えておきたくて」
彼の言葉に意識を向ける。
少し空いた間に苛立ちを覚え、目線で言葉の先を促してやると、
ついに彼は言ったのだった。
「君が、好きです」
と。
放課後の閑散とした学校内の一室で、
ささやかに、
そしてとてもゆっくりと時は流れている。
the song of gondola
「…それは一体何の冗談だ、不二」
「えっ嫌だなあ。冗談に聞こえた?」
手塚は彼の栗色の双眸が細んで見えなくなるこの表情が好きであったが、今この状況でされるべきものではないなと思う。
「これのどこが冗談でないというんだ」
「うーん、唐突だったことは謝るけどね…」
不二は手塚を通り越して窓の前に立ち止まると、
視線は校庭で走り回る下級生たちのもとに、意識は大きく手塚に向けて
「…ゴンドラの唄って知ってる?」
「いや、聞き覚えがないな」
その返答に手塚の方へと顔を向け、
「いのち短し 恋せよ少女
朱き唇 褪せぬ間に
熱き血潮の 冷えぬ間に
明日の月日は ないものを」
唄って、微笑う。
「いい詩でしょう?気に入ってるんだ」
「…何が言いたい」
「……さて、ね…」
その時校庭でワッと歓声が上がった。
試合終了間際、サッカーゴールにボールが転がり込んだらしかった。
不二は再び唄い出し、
唄いながら、
ゆっくりと、
手を伸ばせば届く位置まで手塚に近寄った。
「いのち短し 恋せよ少女
朱き唇 褪せぬ間に
熱き血潮の 冷えぬ間に
明日の月日は ないものを」
手塚はその歌声に誘われるかのように不二の唇へと視線を移す。
朱い。
とても朱い。
朱い唇は発色が良く、しっとりと濡れていて、
一端視線を奪われてしまうとなかなかどうして取り戻せない。
手塚の目は不二の唇に釘付けになった。
「いのち短し 恋せよ少女
いざ手を取りて 彼の舟に」
艶やかに唄う不二の手が手塚に触れる。
「君が柔手を わが肩に
ここは人目 ないものを」
彼のしなやかで白い手は、唄の通りに動いていく。
そして、彼は、
朱き朱き唇を手塚のそれに―――
そっと寄せた。
「いのち短し 恋せよ少女
黒髪の色 褪せぬ間に
心のほのお 消えぬ間に
今日はふたたび 来ぬものを」
最後のフレーズを唄い終わる頃までには、窓の外の音はいつの間にか消えてなくなり、
重なり合った影が少しだけ濃くなっていた。
窓の外にある大木から影をもらった。
教室の扉がカラリと開く。
手塚は無言でそれを見つめ、
「ごめんね、突然呼び出したりして」
視界の端、床で揺れる茶色い影と学生服のきしんだ感触にほんの一瞬気をとられながらも
「僕の勝手な都合で大変申し訳ないんだけれど、どうしてもこれだけは君に伝えておきたくて」
彼の言葉に意識を向ける。
少し空いた間に苛立ちを覚え、目線で言葉の先を促してやると、
ついに彼は言ったのだった。
「君が、好きです」
と。
放課後の閑散とした学校内の一室で、
ささやかに、
そしてとてもゆっくりと時は流れている。
the song of gondola
「…それは一体何の冗談だ、不二」
「えっ嫌だなあ。冗談に聞こえた?」
手塚は彼の栗色の双眸が細んで見えなくなるこの表情が好きであったが、今この状況でされるべきものではないなと思う。
「これのどこが冗談でないというんだ」
「うーん、唐突だったことは謝るけどね…」
不二は手塚を通り越して窓の前に立ち止まると、
視線は校庭で走り回る下級生たちのもとに、意識は大きく手塚に向けて
「…ゴンドラの唄って知ってる?」
「いや、聞き覚えがないな」
その返答に手塚の方へと顔を向け、
「いのち短し 恋せよ少女
朱き唇 褪せぬ間に
熱き血潮の 冷えぬ間に
明日の月日は ないものを」
唄って、微笑う。
「いい詩でしょう?気に入ってるんだ」
「…何が言いたい」
「……さて、ね…」
その時校庭でワッと歓声が上がった。
試合終了間際、サッカーゴールにボールが転がり込んだらしかった。
不二は再び唄い出し、
唄いながら、
ゆっくりと、
手を伸ばせば届く位置まで手塚に近寄った。
「いのち短し 恋せよ少女
朱き唇 褪せぬ間に
熱き血潮の 冷えぬ間に
明日の月日は ないものを」
手塚はその歌声に誘われるかのように不二の唇へと視線を移す。
朱い。
とても朱い。
朱い唇は発色が良く、しっとりと濡れていて、
一端視線を奪われてしまうとなかなかどうして取り戻せない。
手塚の目は不二の唇に釘付けになった。
「いのち短し 恋せよ少女
いざ手を取りて 彼の舟に」
艶やかに唄う不二の手が手塚に触れる。
「君が柔手を わが肩に
ここは人目 ないものを」
彼のしなやかで白い手は、唄の通りに動いていく。
そして、彼は、
朱き朱き唇を手塚のそれに―――
そっと寄せた。
「いのち短し 恋せよ少女
黒髪の色 褪せぬ間に
心のほのお 消えぬ間に
今日はふたたび 来ぬものを」
最後のフレーズを唄い終わる頃までには、窓の外の音はいつの間にか消えてなくなり、
重なり合った影が少しだけ濃くなっていた。
PR